飲食店を楽しむ方法

vol.7 - Column 2018.11.10

カニ解禁を待ちわびたように
初物をたべられる幸せは、
今も昔も変わりません。

先日、
その”幸せ”を味わいに
馴染みの居酒屋へ行った時のこと。

カウンターに並んで座った隣のお客さんが、
「このマグロと鯛はどこ産だ?」
とか
自分が注文した冷酒を難しい顔しながら
「ここの杜氏らしくない味だな」
とか、
まるで怒ってるかの如く
自分の価値観を並べ立てて
”美味しいものしか食べたくない”
を体全体で表現していました。

実はこういうタイプの人が少なくない。

うっとおしい以前に
もったいないなぁ…と思います。

人の評価を気にして店や食べるものを決めてもそこに
「ご機嫌」はないと思います。

「おいしいもの」というのは、
概ね2種類あって、
カスピ海のベルーガや三陸産フカヒレや能登松茸や解禁直後の香箱カニ、
ビックビンテージの銘醸ワインや年代物のスコッチなど、
記号やデータ化されたかたちで表現されるもの。
レストランの星の数や評価もこれに相当しますね。

もうひとつは、
自分がおいしいと思う店の料理や酒です。

こちらは記号化データ化はどうでもよいことなんですが
実はストライクゾーンが広ければ広いほど、
その都度ご機嫌に食べたり飲んだりすることが出来ると思うのです。

これは、
腹が減っていたら何でもうまいという素朴な主張ではないし、
まずいものをそう思わないで食べる姿勢を奨励している
ということではありません。

先ず食事全体を楽しむこと。
その姿勢があるだけで、
「ご機嫌」になれるのだと思います。

よくやってしまうことですが、
やたら人の評価を気にして店やそこで食べるものを決めたりすること。

しかし、
基本的に商品としての料理や酒やサービスの情報は、
「そこでどう楽しむか」というところにはリンクしていないことが多いのです。

有効なのは「すごくは、おいしくはない」店や料理に出会ったとき、
余裕をもって接するということですね。

「おいしいものしか食べたくない」と
上澄みばかりをすくい取ろうとする志向は、
積んできたものがない場合、
貧弱で脆弱だし、
第一楽しくないと思うのです。